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私こと、吉里颯洋がオンラインにて主宰している「作詞教室・爽塾」。
生徒さんの声も交えながら、2023年後期11回目のレッスン・レポートをお届けします。
終了まで、残りのレッスンはあと2回! 生徒さんには今回のレッスンでお披露目する課題曲もこのタームではラストの4曲目となり、いよいよ「卒業制作」ということに。
本日のメインテーマ、新しい課題曲の歌詞の内容を決めていく「企画会議」に、じっくり取り組みました。新しい課題曲は、憂いをびつつもスケールの大きなバラード。映画の主題歌にもなりそうな素敵なメロディを聴くにつけ、作曲者の田村信二さんのメロディメーカーとしての才能に敬服するばかりです。
そんな曲に対して、生徒さんは「プロポーズされた36歳の独身女性が、結婚を決意する心境を描きたい」とのこと。仕事に打ち込んできた女性が年下の男性と出会い、恋に落ちて、諦めていた結婚という夢を叶える。そんなストーリーの歌が共感を呼ぶには?と考えると、いつにも増して表現のリアリティを追求したいところ。歌詞の背景にあたるストーリーを紡ぐのは得意な生徒さんなので、彼と彼女のやりとりなども歌詞に適宜盛り込みつつ、いつも以上にイキイキした物語を紡ぐようアドバイス。歌詞の仕上がりが楽しみです。
短い休憩を挟んで、過去作のレヴュー(講評)へ。
初稿では「Melody」というタイトルで、「恋人を亡くしたシンガーソングライターの女性が再起していく」というテーマでしたが、私のアドバイスもあり、「地方のオーケストラで恋人と知り合った女性が同じオーケストラで知り合った恋人に先立たれながらも、悲しみから立ち直り、明日を模索していく」ようなストーリーに改変。タイトルもシチュエーションの変更を反映して「空と風と君のシンフォニー」と変更されました。
この生徒さんの最近の傾向として、2度目の提出で歌詞のクオリティがグッと上がるのですが、今回もまたそうなったのは良かったと思います。今回から、リライト時の工夫や苦労した点などをメモとして歌詞のファイルに添えてもらったのも、進捗管理の意味で収穫がありました。講評の内容を一部抜粋してご紹介します。
【講評】
・クリスマスソング同様、2度目の提出でクオリティがグンと上がったのは素晴らしいの一言です。50点ぐらいの内容が70点ぐらいにグレードアップした感じでしょうか。
・タイトルの変更と修正後のサビについては、格段に良くなりました。
・元のテーマに添って底上げをするなら、「かつての恋人が天国にいる」ということが明快に分かるような表現がある方が悲しみの淵から主人公が立ち直りつつあるというストーリーの骨子が伝わります。そうしたフレーズをなるべく冒頭に組み込み、それに対するヒロインの心情がさらに真に迫った描写で描けるか、トライしてみましょう。
そして、もう1作レヴューしたのは、生徒さんにとってはおそらく別世界を描くことになる「見果てぬ夢(仮題)」。もっともこちらは、作詞そのものには着手していません。生徒さんが企画した歌詞のストーリーは、「プロのシンガーになる、メジャーデビューする夢を諦めきれずに上京した主人公が東京で再び夢を追う」というもの。歌詞の世界観が生徒さんの実像からかなり遠く、いつも通りのメソッドで歌詞が仕上がらないと判断したため、彼の心情をリアルに感じてもらうため、「主人公が自分を励ますために愛聴しているであろうロックナンバーを集めたプレイリスト」を私が作成してシェアしていました。いきなり作詞に取り掛かるより、まずは主人公の気持ちを理解するのが先決という判断で、いつもの「歌詞の企画立案→作詞」というルーティーンを「歌詞の企画立案→取材的なプロセス→作詞」というスタイルに変更したのです。爽塾のささやかな歴史を振り返ってみても、これは初めてのトライ。裏話をすると、生徒さんがこのターム以降の継続受講をする可能性を見越しての施策でした。「1つの歌詞を仕上げるのに数ヶ月かかろうと、良作が書ければOK」というスタンスです。
そのプレイリストで主人公の気持ちを存分に味わってもらい、今回出した課題は、「それぞれの曲の歌詞の中で主人公が共感している、お気に入りのフレーズを抜き書きしてください」というもの。結果は最初からほぼ分かっていて、全問正解。生徒さんの心の中にいる主人公がどんな気持ちでお気に入りのロックンロールを聴いているのか? 歌詞のどのフレーズに共感しながら、時にくじけそうになる自分の心を励ましているのか? それは、作者たる生徒さんが「きっとこうだろう」と思ったことが正解なのです。以下、生徒さんのコメントです。
そうさんが作詞された、矢沢永吉さんの「年甲斐ない 関係ない 限界なんてない」かっこよかったです!
— Ru (@sphere_ru79) March 8, 2024
選んで下さったどの曲も熱くて音が美しくて...その熱に気持ちを突き動かされて自然と体が動いてしまうような、初めての体験でした☺️#爽塾 #作詞 #歌詞 #オンライン講座 #吉里颯洋 #作詞家 https://t.co/fzzK4wUvHU
次のステップとして、「プレイリストの5曲と課題曲1曲、合計6曲の構成で、主人公が企画&開催する架空のライヴのセットリストを作成せよ」という、かなりロックンロールな課題を出しました(笑)。海外旅行で見知らぬ土地を訪ねて、ガイドブックにはない魅力に遭遇するかのように、今回のスペシャル・メニューを通じて、生徒さんが「ロックンロール」という未知なるドアを開けてくれたら、かつての自分からは想像もつかない歌詞が生まれるはず。こうして歌詞の完成に向けてさまざまな試行錯誤を重ねていますが、課題曲自体は譜割が時に難しい激しいロックナンバーではないので、主人公の心情に寄り添えれば必ず完成させられるはずと信じています。
そんなこんなで、今宵のレッスンも無事に終了。
このターム最後のレッスンとなる次回は、レッスン後に打ち上げをする予定なので、それも楽しみです。
Power to The Songs!
歌に力を!
※ロックンロールの歌詞に時に欠かせないのが、リアルなストリート感覚。東京がもし夢を追うためのリングなら、彼の目に写るものは何なのか、気になりますね。写真は、都心ではなく、西武所沢駅側のプロぺ通り。